モンキーパッド mas ― 南スペインの風と小さなカウンターで
JR中野駅から北口を出て、昭和新道商店街を歩くこと約5分。
白壁と小さな看板が目印の「モンキーパッド mas」は、全10席だけのスペインバルだ。カウンター越しに湯気立つ鍋やシェリーの香りが漂い、まるで南欧の夜に迷い込んだような気分になる。
■ フラメンコのリズムとともに歩んだ40年
このお店のルーツは1982年までさかのぼる。中野駅近くで開いた前身の店は、今より1.5倍も広く、フラメンコライブも盛んに開催されていたという。
「音楽と料理、両方が人をつなぐ空間でしたね」と話すのはオーナーの磯野智子さん。神戸生まれの磯野さんは、フラメンコの輸入や旅のコーディネートを30年以上手がけ、毎年1.5〜2カ月はアンダルシアでの仕事に携わる。その間は店を休み、現地で新しい料理や食材に触れ、インスピレーションを持ち帰るのだ。
2017年、昭和新道商店街の今の小さな店に移転。店名の「モンキーパッド(Monkeypod)」は、ハワイの大樹の名。大きな枝の下で人が集い、雨宿りするような、そんな居場所になれたら――という思いが込められている。
■ コンパクトで落ち着く空間
間口一間ほどの細長い店内は、落ち着いた色調と温かな照明に包まれた、まさに大人の隠れ家。手前には小さなテーブル席、奥にはカウンターがあり、料理の香りや調理の音がすぐそばで感じられる。客と店主の距離が近く、自然と会話が生まれる居心地の良さが魅力だ。
■ 手間ひまかけた一皿
一番人気は「アルボンデガス(スペイン肉団子)」。肉団子をサルサロサで煮込み、ハーブとニンニクの香りが食欲を誘う。ランチではサフランライス付き、バルタイムは単品で登場する。
パエージャは3日前までの予約制。魚介スープを3日かけて仕込み、ウサギ肉、イカ墨、海鮮、山のキノコなど希望に応じて炊き上げる本格派だ。
そのほか、マッシュルームや海老のアヒージョ、その日だけの特別メニューも人気。熟成ハモンイベリコが登場する日もあり、日本のバルでは珍しいシェリーのラインナップも楽しめる。
■ 「また木の下で」
「スペイン料理は高価な食材じゃなく、時間と手間が命なんです」と磯野さん。現地での経験を惜しみなく料理に生かし、火曜・木曜の定休日には仕込みや休養に充てる。年に1〜2回の長期休業では、フラメンコや旅の添乗の仕事で渡西し、帰国後は新たな味を届ける。
客を見送るときの決まり文句は「¡Hasta luego! また木の下で」。その声に送られ、扉を開けた瞬間、中野の街に戻ってくる感覚がちょっと不思議だ。
◆おすすめメニュー
- アルボンデガス(スペイン肉団子)
- マッシュルームのアヒージョ
- 海老のアヒージョ
- 予約限定パエージャ
◆店舗情報
住所:東京都中野区中野5-54-8 1F
アクセス:JR中央線・総武線/東京メトロ東西線 中野駅北口 徒歩5分
営業時間:
ランチ(土日+不定期水曜) 11:30-14:00
バル営業(月水金土日) 17:00-22:00(L.O.)
定休日:火曜・木曜(年1〜2回、1.5〜2カ月間の長期休業あり)
予算目安:ランチ ¥1,000 前後/夜 ¥3,000〜¥3,999
リンク:
食べログ
Google Maps




